【Archives】銘木物語「鳥海山と埋もれ木」

鳥海山がもたらす大地のドラマ

「象潟」は古くから歌に詠まれる奥羽屈指の景勝地であった。
その美しさはかの松尾芭蕉に「松島は笑ふが如く、象潟はうらむがごとし」と表され、文人墨客のこぞって訪れた潟湖であった。
その風光明媚な風景を造ったのは鳥海山の山体崩壊であり、崩壊した土砂により地中奥深くに埋もれた樹木が「埋もれ木」となった。
現在の象潟といえば、田んぼの中に点々と島が浮かぶ九十九島の風景が思い浮かびます。
この風景が出来上がるまでには様々な地球のドラマがあったと想像できますが、壮大で劇的な物語の一部をかいつまんで紹介します。
まずは紀元前466年、およそ2500年前の縄文時代におこった鳥海山の「山体崩壊」です。
山の北西部(まさににかほ市側)が崩壊したことにより、その岩なだれは日本海まで達しました。
この時にできた流れ山という地形が現在見られる「島」となりました。
やがて浅瀬に砂嘴が発達し、海と隔てられ、一帯は島が点在する潟となりました。
次のターニングポイントは1804年、およそ200年前の江戸後期に起こった「象潟地震」です。
この地震により土地が隆起し、象潟は一夜にして陸になりました。
だいぶかいつまんでいますが、このような土地が持つダイナミックなドラマと生み出された景色により、古くから人々を惹きつけ、芭蕉をはじめとする多くの旅人が目指す景勝地となりました。
そしてこの地球のドラマが生み出した副産物の一つが「埋もれ木」です。
「埋もれ木」とは「山体崩壊」の岩なだれの下敷きになり、地中に埋もれた樹木のことです。
釜ヶ台地域では江戸時代から埋もれ木を発掘していたことがわかっており、「神代木」として珍重されてきました。
また近年、日本海東北自動車道の象潟ICの工事現場から、ケヤキ、クリ、コナラ類など落葉広葉樹を主とした大量の埋もれ木が出土しました。
地中に埋もれていた「埋もれ木」は当時の出来事を現代に伝える、まさにタイムカプセルです。
分析することで、山体崩壊当時(縄文時代)のこの地の森林分布や、岩なだれの規模や状況を知ることができます。
「埋もれ木」は長い間地中に埋もれていたため、圧力により変成し、半ば炭化した状態で、黒く固いという特徴があり、貴重な資料であるとともに伝統工芸品の材料としても珍重されてきました。
この地域で発展した組子細工などの木工芸品でも黒のアクセントとして使われいます。
「埋もれ木」が伝えるドラマを知ることは、その見た目の美しさだけではなく、そこにある土地の記憶を感じることに繋がるのだと実感します。
ここでは語り尽くせない「象潟」と「埋もれ木」の物語は、「にかほ市象潟郷土資料館」でより詳しくわかりやすく知ることができます。
ぜひ「埋もれ木」の魅力に触れてみて下さい。
にかほ市象潟郷土資料館
にかほ市象潟町狐森31-1
☎ 0184-43-2005
営業時間:9:00 ~ 17:00
休館日:月曜日
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