秋田スティーラーズ/亀山 星華(秋田県にかほ市平沢)

2020年春、一人の女性がふるさとにかほ市に決意を持って帰ってきた。
学校の一斉休校から初めての緊急事態宣言へと社会が不穏に動き、先の見えない霧の中を歩む端緒となる、あの2020年春である。
そこからの2年、彼女は深い霧の中をまるで何かに導かれるかのように突き進む。ときに迷い、ときに躊躇いながら。目指すものがその先にはあるから。

にかほ市多目的屋内運動場「エスパーク★にかほ」には3x3のコートが常設されている

亀山星華(かめやませいか)さんは1995年生まれ。にかほ市出身。
バスケットボールが大好きで、女子バスケ部のある由利高校へと進んだ。
高校卒業後、(難関だと思うが)国家公務員となり青森へ(その後、山形へ)。
「世のため、人のために仕事をしたい」、志を持って進んだ道。
仕事も人間関係も充実し、社会人としてもバスケを楽しんでいた。

秋田から県外に出て、その地域の人と交流して気づいたこと。
「青森の人も山形の人も地元が大好き」、「地元のことを誇りに思っている」
それは秋田にいたときは感じられなかった感覚。いや、自分だって秋田のことが好きだ。
でもそれをうまく伝えられない。秋田のいいところっていっぱいあるのに。

秋田の人は口癖のように「秋田にはなにもない」と言う。
秋田の人が自ら秋田の価値を下げているような気がしてならない。
若い人が言う「なんもない」は、ただ単に知らないだけなのかもしれない。
大人が言う「なんもない」は、秋田人の奥ゆかしさなのか、謙遜なのか、口下手なのか…。
その証拠に「なんもない」という割には盛大にもてなす、次から次へとお酒と料理が出てくる。
そして県外の人から「秋田はなにもない」と言われるとちょっとムッとする。

もっと自分の地元を堂々と「大好き」と言い誇りに思っていいはず。

「秋田を盛り上げたい」

そんな思いが日に日に強くなる。
そして、「世のため、人のため」という志を、より明確な自分の進む方角にシフトすることを決意する。
その手段として選んだのは、3人制バスケのトップリーグ「3x3.EXE PREMIER」
退職した彼女はプロスポーツマネジメントの道を歩むこととなる。

強い意志と明確なヴィジョン。話す言葉も明快。

ここで、退職した2020年3月以降のアクションを整理してみよう。

2020年3月  退職
2020年5月  能代スティーラーズ発足
2020年6月  鳥取のチームでスポーツビジネス(営業や広報など運営全般)の勉強
2020年10月  クラウドファンディング開始
2020年10月  合同会社スティーラーズ設立、代表就任
2020年12月  にかほ市に拠点を移し秋田スティーラーズとして始動

松本) 君、とにかく「せっかち」なんだね。
亀山) 「せっかち」ということに今日気づきました。

プロチーム秋田スティーラーズとして初めて臨んだ2021年シーズン。
チームの登録メンバーは上限6人。リーグに登録した選手に交渉し、チームメンバーとして迎える。
ファイトマネー制でシーズン8試合。2021年シーズンはコロナの影響で半分の4試合にとどまり、カンファレンス6チーム中5位。
スポンサーをはじめファンの方、行政の協力、家族や周囲の後押しに支えられ、ファーストシーズンを終え、今に至る。

©秋田スティーラーズ
©秋田スティーラーズ
©秋田スティーラーズ

もちろんチームの勝ち負けも重要だが、あくまでも目的は秋田を盛り上げること。
2021年11月には体験会を開催し、多くの人に3x3の魅力を伝える機会をつくった。
本来であれば、試合やイベントの開催を通じてチームと地元の交流をもっと進めたかったところ。
それを許さない社会情勢の中で、もがく日々は続いている。

若者たちが3x3を体験 ©秋田スティーラーズ

 「この2年はやりたいことがどんどん蓄積されている期間」
小中学生などにも裾野を拡げ、地元を巻き込み、人の心を動かし、秋田を元気にする活動をやりたくてしょうがない。
社会からブレーキを掛けられたことで、徐々に本当にやりたいことが見えてくる。

試行錯誤の日々が続く
3x3公式球

3x3はそのルール上、とっても疲れる。
プレーする選手はもちろん、そのスピード感あふれる試合展開に見る側も疲れる。
プロの試合を観た人は、そのスピードと迫力に次第にハマっていく。
これからの時代、少ない人数(6人)で成り立つスポーツとして、そして、プレー場所の制約が少ないスポーツとして、幅広い年代に受け入れられていく可能性を持っている。
プレーヤー各自が考え、臨機応変にプレーする必要があり、チームプレーとしての協調性とともに自主性が養われる。

チームのコンセプトは「希望・挑戦・人」。正に今の彼女自身を表す言葉。
チームの理念は『サードプレイスの構築』『非日常の日常化』『身近なヒーロー』。
「する・みる・ささえる」人の輪が、秋田にひろがり、まちを、秋田を、秋田の人を誇りに思う気持ちが連鎖し浸透していく。
近い将来、そんな秋田の姿が想像できる。

まもなく2022年シーズンが始まる。
この2年、蓄積しまくった彼女の企画やアイデアが今年は日の目を見ることができるだろうか。
ただ、今年が難しければまた来年、さらにブラッシュアップしまくったとんでもない企画がお目見えするかもしれない。

「自分のやっていることが、誰かの挑戦の後押しになれば」

目的地がはっきり見えている人は強い。

Interview / 松本 学、Write, Edit & Photograph / 齋藤 渉