画家 大須賀勉│鳥海とライフ

画家/大須賀 勉
(秋田県由利本荘市)

その美しい絵画は由利本荘市文化交流館カダーレの通路に飾られている。
ぶらんこで揺れる少女。やさしく繊細なタッチで描かれたその画は、緻密でありながら流れる風までも感じさせてくれる。
この画を描いた大須賀勉さんは由利本荘市出身・在住。自然を愛し、庭いじりが大好きな41歳。
由利本荘市に暮らし、作品を制作し、その作品を携えて全国を周る。職業=画家である。
インタビュアー松本とは1学年違いの同世代。
同じ少年時代を由利本荘で過ごし、表現者=アーティストを志し、東京に向かった者同士でもある。
香川県高松市での個展を終えて秋田に戻ったばかりの大須賀さんにお話を伺った。

大須賀さんの作品の一部が並ぶ絵画教室でお話を伺った
カダーレの通路に展示された作品
作品名は「ぶららこ」
大須賀さんの初期の作品である


高校卒業後、東京の専門学校で絵画を学んだ大須賀さん。卒業後は働きもせず、そのまま東京でぶらぶら過ごしていたという。

「東京でぶらぶらしていたものの、自分なりの表現の模索、いい絵を描きたい、画家になりたい、という目標、目的はありました」

そのころ、祖母が病気で入院したこともあり、秋田に帰省する機会が増えていた。

スケッチのモチーフとなるアイテムたち
教室には様々な画材が
画家としての制作の傍ら絵画教室を主宰

秋田で画を描くということ。
刺激に溢れた東京…そこでは描く対象は「人」が中心だった。
秋田で過ごす時間…何よりも気持ちが落ち着いた。そしてそこにある自然に癒やされた。
むしろ作品作りには秋田の方が何かとメリットが多いことに気づいた。
画材はインターネットで買えるし、何よりも大きな作品に取り組めるスペースが確保できた。
2005年。25歳のときに、創作と生活の拠点を秋田に移し、本格的にコンクール出品のための作品制作に取り掛かる。
結果はすぐに現れ、数多くの賞を受賞。
「画家」という生業 -ナリワイ- が形作られていった。

東京では描くモチーフに悩んでいた。
東京にいると描く対象は人になりがちだったが、自然な流れで秋田の風景を描くようになった。

同世代トークは弾む


徐々に対象が人から自然へ。

大須賀さんが描く秋田の風景の中には鳥海山が多く登場する。
日々刻々と変わる山と自然の表情。
そのような表情と空間を読み取る卓越した力。
そして、数々の試行錯誤の末たどりついた表現。
銀箔と岩絵具を用いた独自の技法により、見る角度や時間経過までもがその作品の一部となっている。
まさに「静謐」「変化」を作品へと昇華させているように感じさせる。

独自の技法で描かれた鳥海山
銀箔を使用する独自の技法
やぶれないように慎重に
繊細な作業


秋田は題材に溢れている。

秋田で見たもの、感じたことが作品となり、全国をめぐっている。
「日々、この雄大な景色に癒やされ、それに浸っている。そしてそれを描いている。それだけで十分満たされている」

お話を伺った場所は、由利本荘市中心部のビル3階にある「大須賀勉絵画教室」
普段何気なく通る場所だが、恥ずかしながらそこに絵画教室があることを知らなかった。
毎週土曜日の教室開催日には15~20人の生徒たちがやってくる。生徒の年齢層も幅広いそうだ。
この自らが主宰の絵画教室のほかにも、秋田市などでも教えている。


これからの目標について聞いてみた。

「好きで画を書いて、それを仕事にしている。これを続けていければ、それだけで満足。今のままでいい」
「ただ、『秋田で暮らし、生きることの素晴らしさへの共感』が広まって欲しいと思っている」

秋田の人は得てして「秋田には何もない」と言いがちだが、むしろ何でもある。
ここに確かにある価値に気づき、それを大事にする人々の共感が広まれば、子どもたちも自然に秋田のことが好きになる。
子どもの頃の経験と記憶ってとっても大事。
やはりそこは大人の責任であり、そのためにも大人同士の共感が必要。

アートへの理解、アーティストへのリスペクトも必要なこと

大須賀さんは年間約120枚の画を描いているという。
3日に1枚だ。その1枚1枚に込めた彼の思い。
秋田で作品を生み出すこと、秋田で画を教えること、といった彼の生き方一つ一つが、『共感』の輪を広げていく。

共に自然を愛し、地元を愛する表現者=アーティストである二人。
『共感』と『共鳴』と『伝播』の連鎖がこのまちの未来へと繋がり、受け継がれていくに違いない。

 

Interview / 松本 学、Write, Edit & Photograph / 齋藤 渉

大須賀勉絵画教室 HP https://tomartfactory.wixsite.com/osug-art
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鳥海とライフ

「ここで生きる」は様々な偶然と選択で出来ている
ここで生まれたから、ここが好きだから、ここしか知らないから、ここは居心地がいいから…

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